わたしを離さないで


わたしを離さないで観了。
『わたしを離さないで』はカズオ・イシグロの同題の小説が原作の映画。私はキーラ・ナイトレイが出ていることから興味を持ったので、小説は観了後に読んだ。
舞台はイギリスであるが、建物や服装や背景などから何時の時代かを認識できず、変な感覚だった。少し古さを感じる映像でありながら、臓器提供が一般化され、その提供者が育成されるという近未来の設定が混じった不思議な映画だ。
小説ではヘールシャム以後のエピソードが多く、映画ではヘールシャムのエピソードが多いように感じた。そのため、映画では幼少期のキャシーとルース、トミーの三角関係が密に描かれていたように思えたが、小説では主人公であるキャシーの一人称の視点が主で、そこからのルースとトミーの関係の描写が中心であるように思えた。
つまり映画ではSF要素よりもラブ・ストーリーに重きを置いた作りになっていたようだ。逆に小説の方が臓器提供など残虐性が大きく表現されていたように感じた。
映画にせよ、小説にせよ、テーマが臓器提供、限られた生を扱っているのに退廃的で、緩やかな時間の流れる映画であり、何故だか辛いのに穏やかに観れた映画だった。
評価的には84点。

この映画に限っては小説、映画どちらを先に見ても大丈夫だと思う。



これが原作小説。今度は同じカズオ・イシグロの浮世の画家を読もうと思う。